Japan Radiosensitization Research Association
昭和57年4月~平成6年6月
<設立趣意> 昭和57年4月
癌は今や我国の死因の第一位を占めており、その治療成績の向上は国民の誰もがのぞむところであります。このような情勢に対し、放射線治療の向上の努力の結果生まれつつある放射線増感剤、防護剤のような化学的修飾法が実験的にかなりの成果をおさめつつあります。しかし、臨床的に活用して癌治療成績を飛躍的に向上させるにはなお一層の組織的な研究開発が必要であります。
さらに、このように放射線感受性の修飾因子として開発された薬剤や、ハイパーサーミアが放射線のような局所療法だけでなく、全身的に用いられる化学療法に対しても有効な修飾因子となり得ることが基礎研究の結果明らかになって来ました。このことは癌の最終的な治療法へさらに一歩近づきうるものと注目されております。なお、放射線治療改善のもう一つの柱として加速器による粒子線治療があり、それなりの成果をあげておりますが、これには巨大な装置と莫大な経費を要するので、放射線治療の到達点を見極めるための治療研究としての意義は極めて高いのでありますが、癌のように国民的な規模での治療法が必要なものでは必ずしもそれのみで十分ではありません。その点化学的あるいは物理的修飾方法によるものは極めて一般的であり、普及型治療法として理想的なものといえましょう。このことは昨年(昭和56年)京都で開催された国際原子力機関セミナー“発展途上国で有望と考えられる放射線治療法”においても確認され、研究推進の方向について意見の一致を見たところであります。
そこで学会、医療機関、産業界の協力のもとに、組織的、協力的研究体制を作ってこの新しい分野の積極的発展を推し進め、また広く国際的にも協力と情報交換を行ない、我が国のみならず世界の、殊に発展途上国の癌治療の向上に貢献するために、この研究協会の設立を計画した次第であります。現在でもこの分野では文部省、厚生省などの癌関係の研究班や、産学協同の形での研究グループなど多くのものが組織され、研究者層も次第に厚くなりつつあります。しかし残念乍らこれらは夫々が個人的な関係で結ばれているだけで、有機的な連絡に欠けるうらみがあります。そこで、こらからの研究開発の進展を考えるならば、どうしても中心的な推進組織を作り、それが学際的研究を推し進めて行く体制が必要であり、本協会がその推進役として働きうることを念願するものであります。
従って、この研究協会は単に学術交流の場にとどまらず、放射線増感に関する研究開発とその受託、あるいは助成、関連研究班相互の連絡、国際的 news letter の発行などを行う機関にしたいと存じております。
関係の皆様にはこの主旨に御賛同の上、ご参加下さいますようご案内申し上げます。
<発起人>
菅 原 努(国立京都病院) 坂 本 澄 彦(東北大放基)
鍵 谷 勤(京大工) 斉 藤 正 男(東大医用電子研究所)
阿 部 光 幸(京大医) 田 中 敬 正(関西医大放)
安 徳 重 敏(九大放基) 寺 島 東洋三(放医研)
青 山 喬(滋賀医大放基) 金 子 一 郎(理研)
稲 山 誠 一(慶應大薬化研) 波多野 博 行(京大理)
小野山 靖 人(大阪市大放) 藤 田 栄 一(京大化研)
岡 田 重 文(東大放基) 母 里 知 之(東海大放)
加 納 永 一(福井医大) (順不同)